その17.釜石線開業70周年記念に寄せてU
令和2年9月1日

釜石市郷土資料館 館長 村上 修

 楽しみにしていたJR釜石線恒例の「SL銀河」は、コロナの影響により、7月18(土)から8月16(日)にかけて、5往復のみの運行となってしまいました。残念です・・・。
 さて、前回に引き続き、今回も、懐かしの急行列車「陸中」の話を続けます。

 釜石−上野を直通で結んだ「陸中」でしたが、昭和41年になると、「陸中」は仙台から花巻・釜石・宮古を経由して盛岡に出て、さらに花輪線経由で秋田まで行く“急行”に生まれ変わりました。伝説の急行「陸中」の誕生です。昭和30年代後半以降、気動車急行の増備に伴って、ローカル線にも準急や急行が設定されるようになり、特に仙台以北はその機動性を活かして、分割・併合を繰り返しながら目的地に向かう多層建て列車が多数設定されました。釜石線を走る急行「陸中」はその代表格でした。

 そこで、昭和43年10月1日改正の『国鉄監修 交通公社の時刻表』で、当時の複雑怪奇な急行「陸中」の運用を辿ってみましょう。杜の都・仙台を朝の7時40分、盛・青森・秋田行きの急行「むろね1号・陸中・くりこま1号」が出発します。東北本線を一路北に進路を取り、9時06分一関に到着。ここで最初の分割・併合が行われます。まず、大船渡線に分け入って三陸沿岸の盛へ向かう「むろね1号」後ろ3両を切り離します。と、同時にその大船渡線からやって来た盛発青森行きの急行「さかり」2両(盛〜一関間は普通列車)を先頭に連結、「陸中・くりこま1号・さかり」となって、9時12分、北へ向けて発車します。花巻着は10時04分、釜石線に分け入り三陸沿岸を目指す後ろ3両の「陸中」を切り離し、代わって釜石発の盛岡行 急行「はやちね1号」3両を先頭に連結します。10時10分に花巻を後にした「くりこま1号・さかり・はやちね1号」は、10時45分盛岡に到着。ここで「はやちね1号」を切り離し、10時55分、身軽になった「くりこま1号・さかり」は終点の青森へ向けて旅立ちます。終点青森着が14時01分。さて、花巻で分割された「陸中」のその後が気になるところですが、これが奇想天外な動きをします。


急行陸中に手をふる子供たち


長大編成の多層建て気動車急行が架線下を行く
 というわけで、今回も長くなりましたので、この辺で失礼します。このお話はまだ続きます。次回、乞うご期待