汚水処理が歩んできた歴史や、今後の整備計画等についておしらせします。

1.下水道(汚水処理)の歴史
2.これからの整備計画

3.汚泥も有効利用を
4.高度処理

1.下水道(汚水処理)の歴史

1.自然の浄化力

地球の上にはいろいろな生物が暮らしています。日本の野山にもさまざまな動物が住んでいますが、それらの動物が原因で川が汚れてしまったとか赤潮が発生してまわりの環境に悪影響を及ぼしたとかいうことは聞いたことがありません。それは野山や川の持つ自然の浄化力が、そこに暮らす生き物による汚染よりもはるかに大きな包容力を持ってバランスを保っているからです。

2.人口密度の増大

人類は猿のような祖先から進化して集団で暮らし始め、文明を持つようになるとさらに大勢の人が狭いところに集まって便利に暮らすようになりました。その状態で大昔に他の動物と暮らしていた時と同じように、排泄物や残飯を無造作に周囲に捨てたらどうなるでしょうか。 古代の都市の遺跡には排水を流した溝が残っていますが、当時は汚物を流し去るだけで、浄化する設備はありませんでした。 18世紀以前のヨーロッパでは家にトイレが無く、汚物は道路に投げ捨てられていました。そのような衛生状態が原因となってペストやコレラなどの伝染病により14世紀にはヨーロッパ人口約7400万人のうち、3分の1の人々が亡くなったと言われています。 また日本においても明治時代にいく度かコレラの流行があり、多くの人が亡くなっていて衛生状態の改善が必要でした。

3.浄化機能を持った下水処理場の登場

この状態を解決するためには汚物を下流に流し去るだけでなく、浄化機能を持った下水処理場が必要でしたが、その構築にはポンプ・配管・各種駆動装置といった高度な技術を要する設備や、微生物による浄化機能の解明などが必要で、最初の下水処理場ができたのはイギリスのロンドンで1914年(大正3年)、日本では三河島の処理場で1922年(大正11年)になってからでした。つまり人間の力で汚水を浄化できるようになってからまだ100年も経過していないのです。

4.合流式下水道の普及

大都市部においては雨水と雑排水の排除が早急に求められていたことと、し尿は汲み取り式が中心であったために、経済的にも有利な合流式の下水道で建設が進められ、昭和40年代半ばまでは分流式は普及しませんでした。 ※合流式とは、雨水と汚水を同じ管で流下させる方式です。別々の管で流す方式を分流式といいます。

5.水質保全としての下水道

昭和30年代から40年代にかけて、公害や生活排水による公共用水域の汚染が深刻となったため、下水道法が改正されて「公共用水域の水質保全」が下水処理の主目的として明記されました。

6.合流式から分流式へ

大都市部を中心に普及している合流式下水道ですが、大雨時に油のかたまりなどの汚物が公共用水域へ流出する弊害が看過できなくなり、平成15年度に施行令改正によって合流式下水道管からの越流物質低減や、分流式への転換が進められる事となりました。

7.都市部と地方の普及格差

都市部では人口密度が高く投資効率が良いこともあって、下水道などの汚水処理が急速に普及してきましたが、地方では長い間汚水処理設備の普及が進みませんでした。平成27年度末で、全国平均の下水道普及率は77.8%ですが、人口5万人以下の市町村に限って見ますと49.7%と半分近くにとどまっています。
そこで全国の自治体をはじめ、岩手県・釜石市においても次節のような計画を持って汚水処理普及率の拡大を図っています。

2.これからの整備計画

 1.釜石市の汚水処理計画について

 釜石市として平成30年度までに公共下水道・農業集落排水・漁業集落排水・合併処理浄化槽等の合計の普及率で78.5%を達成するように各処理事業の推進を図っております。

計画策定の目的

岩手県が現在進めている「いわて汚水適正処理ビジョン2010」に基づき、平成22年度に見直した「釜石市汚水処理実施計画書」を策定し、衛生水準の向上と公共用水域の保全を図ることを目的としています。

基本方針

(1) 公共下水道地域では引き続き下水道施設整備を促進する。
(2) 公共下水道地域外で比較的人口が密集している地域では、農業集落排水施設及び漁業集落排水施設の集合型汚水処理施設を整備する。  
(3) 公共下水道地域外で小規模な集落または家屋が分散している集落では、各戸による合併処理浄化槽方式で整備する。

数値目標とグラフ  単位%   
 
          

2.岩手県の汚水処理計画について

 岩手県では平成16年に策定した前の計画を見直して、平成22年に「いわて汚水処理ビジョン2010」を策定し、次のような事項を重点的に進めています。詳しくは岩手県下水環境課のホームページをご覧ください。

1.整備計画~効率的・経済的に汚水処理普及を進める。平成30年度の水洗化人口を県民の77%します。
2.処理しないまま川へ流れている家庭雑排水を県庁0.9杯分から0.5杯分に減らします。(1日当りの換算値)
3.汚泥処理~汚水処理の普及により発生増加する汚泥の有効利用と適切な処理の推進
4.維持管理~適正・経済的な設備管理と、健全な下水道経営を目指す
5.情報公開と住民参画~事業の透明性と住民の知りたい情報を提供し意見を取り入れる
6.雨水対策~平成30年度末までに、過去10年間に浸水被害のあった全市町村が、内水ハザードマップ等を公表します。

3.汚泥も有効利用を

 1.汚泥の処理方法

汚水処理の過程で水分は浄化されてきれいな水になります。汚濁物質については一部がガスとなって放散するほか、大部分が汚泥となります。汚泥の処理は処理場内で中間処理する場合と、外部の処理業者で行う場合があり、次のような処理方法があります。これらを単独又は組み合わせて汚泥の処理を行います。
(1)液状汚泥を脱水
(2)発酵処理してコンポスト化
(3)乾燥・炭化
(4)焼却・溶融
釜石市では場内で (1)脱水 のあと、民間業者に委託して (2)コンポスト化 にして最終処分(緑地還元)を行っています。

2.汚泥のゆくえ

加工された汚泥は産業廃棄物として処分されますが、最終的な処分の形態には次のような種類があります。

最終処分形態 主な原料形態
(1) 最終処分場への埋め立て 焼却灰と脱水汚泥
(2) 緑地・農地への還元 コンポストと脱水汚泥
(3) セメント原料に混入して建設資材化 焼却灰
(4) レンガ等の建築資材化 焼却灰と溶融スラグ
(5) 燃料化等 乾燥汚泥

3.処分方法の比較

汚泥処分の方法を選択するに当たっては、次のような比較項目が考えられ、総合的に判断して選択することが求められます。
(1)合法性
関係法令・例規に沿った処理がなされること。処理が適正になされているか委託先に立ち入って確認することも必要
(2)搬出汚泥形態との適合
当所では含水率平均76%程度の脱水汚泥だが、その性状に適合した処理がなされること
(3)処理の安定性
年間を通して当方の排出量に見合った受け入れと良好な処分が可能であること。経営主体が民間企業である場合にはその最終処分形態の確認と経営状況等においても信頼のおけるものでなければなりません。
(4)環境への影響
処理運転過程及び処理プラント建設を含めてCO2の排出が少なく、運転エネルギーも小さいこと。
(5)経済性
処分単価が他の方法に比較して安価であること

近年下水汚泥はバイオマス(生物に由来するリサイクル可能なもの)であるとして焼却処理を積極的に進めようという考え方もあります。
当市では補助燃料や動力の消費量、処理プラントの建設費や汚泥の処分経費などを検討し、コンポスト化民間委託の方針をとっています。コンポストは他の植物の肥育を助長し、CO2の吸収に寄与します。またその一部は再び安定化して化石燃料に戻ることも期待されます。

4.高度処理

1.高度処理とは

高度処理とは、主に処理水の中水道などへの活用や放流先である河川や海域(特に閉鎖性の高い湾など)における富栄養化対策等の環境対策を目的として、高級処理(※)を行った後に再度浄化処理を行うこと、またはそのための施設設備の事を言います。
その内容としては、高級処理が終わった処理水に、薬品を加えたり、ろ過したりして、目に見えない汚れや水に溶けている成分を除去したり、高級処理では除去が難しい窒素やリンなどの富栄養化の原因となる物質を、エアレーションタンク内に、2種類以上の嫌気・無酸素・好気的な状態をつくりだすことで、様々な微生物の力を利用して除去したりします。

2.高度処理の必要性

 一般的な下水処理としておこなわれている高級処理(※)でも、下水中に含まれているBODやSSの殆どは取り除く事ができます。しかし、植物プランクトンの栄養源であるリン、窒素については効率的な除去が難しく、処理場へとやってきた物の一部は処理水に混ざって放流されています。これが少量の場合は影響が少ないのですが、湾や湖などの水のながれの少ない所へ多量に流れ込んでしまうとプランクトンが多く発生し、魚たちに悪い影響をあたえたり、臭いが発生する可能性があります。それを防ぐために高度処理を行う処理場が増えてきています。

※二次処理ともいい、沈澱処理(一次処理)した下水を更に浄化する処理方法。釜石市の下水処理場で採用されている標準活性汚泥法もこれに含まれる。ちなみに一次処理(簡易処理)とは下水中の固形物分や油脂分を沈殿させたり浮上させる事により、除去する処理のこと。一般的に下水処理場では最初沈殿池がこれにあたる。